ガラスの重さ
ガラスの重さといっても普通の人はあまり窓にはまっているガラスを持つような機会はないと思いますが、ガラス製のコップや食器などをイメージすれば概ね重いという印象があると思います。建築用ガラスの場合、比重(単位体積あたりの重量)は約2.5なので、重量に換算すると縦横1mのガラスであれば厚さ1mmあたり約2.5kgになります。これは一般的なプラスチック(比重1~1.2)のほぼ倍にあたりますが、鉄やステンレス(比重7.8~8.0)と比較すると1/3、軽量な金属とされるアルミ(比重2.7~2.8)と比較しても僅かにガラスの方が軽いのです。
ただ、「アルミとガラスのどちらが重い?」と尋ねて「アルミが重い」と答えられる人は滅多にいません。それどころか「鉄とガラスどちらが重い?」と尋ねても「ガラスが重い」や「同じくらい」といった答えが返ってきます。鉄とアルミであれば間違える人は少ないのになぜでしょうか。
この誤解の起きる原因の一つは、製品を作る場合には例え同じ用途でも材料特性に応じてそれぞれ構造が違うということがあります。身近なところでジュースの容器について考えてみます。先ずプラスチック容器(PETボトル)について考えてみると、PETボトルは多少強い力を加えた位では割れません。
ガラスや金属と比較すると弱い力で変形しますが、よほどひどい変形をした場合を除けば加えた力を放せばすぐに元の形状に戻ります。この為あまり厚みを厚くする必要はなく、比重の軽さと相まって大変軽くて実用性のある容器を作ることが可能です。次にガラスはプラスチックと比べて硬く、変形しにくいですが、強い力を受けると割れてしまいます。割れてしまえば容器としての役割を果たさないので、最低限日常的な取扱いには耐えられるような強度(厚み)が必要になります。そうするとガラス瓶は、PETボトルより厚みが厚くなり元々比重も大きいので重い容器になります。
鉄は強度が高く変形しにくい上に、通常の取扱いではまず割れません。しかしプラスチックと比較すると永久変形(変形時の力を開放しても元に戻らなくなる)を生じやすく、変形を繰り返すとき裂を生じます。この為持っただけで変形するほど薄くは出来ませんが、ガラスよりはずっと薄くすることが出来、比重はガラスより重いにも関わらず、ガラス容器より軽くすることが出来ます。
これは容器に限った話ではなく、窓(サッシ)でも車でも金属部分は概ね1mm以下の薄い板を箱や筒状にしたり、面に凹凸を設けたりすることで軽量かつ強度の高い構造になっていますが、曲げや接合などの加工が困難な上に割れる恐れのあるガラスは、ある程度厚みのある板状で用いられ、重くなっています。一般家庭において容器や断熱目的以外で中空構造(内部が空洞)になっているガラス製品や、ある程度大きさがあるもので中空や肉抜きのない金属製品はまずないと思います。もし同じ形、同じ厚みで同じ構造に作られたガラス製品と金属製品を手に取る機会があれば、その重さは比重の数値に応じた値になりますので誤解がとけますが、それではすぐに割れるガラス製品か重くて高価な金属製品が出来上がることになります。つまりガラスは素材としてはアルミよりも軽いのですが、実用的な製品にすると大概アルミどころか鉄よりも重くなってしまうというわけです。このため、日常生活では素材としてのガラスや金属に触れる機会はないので、製品の重さが素材の重さとして誤解されているのです。
※本内容は一般的な知識に基づいて書いており、弊社では容器類の設計・製造は行っておりません。
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